「キュイジーヌ」は、作・編曲者としてのみならず指揮者としても活躍が著しい、吉岡弘行氏の合唱組曲である。もともとは女声または児童合唱として作曲されたものであるが、今回は作曲者自身が手を加えた混声版で演奏する。
キュイジーヌとは、もともと台所とか厨房という意味のフランス語であるが、近年○○キュイジーヌ(○○は地名など)という言葉をよく見かけるように、料理法や料理そのものを意味するものとしても使われている。
曲は以下の5曲から成るが、5曲中4曲の歌詞が料理の作り方(レシピ)となっており、時折見せる“こだわり”のレシピがまた面白い。
1.「スパゲッティ ペスカトーレ」漁師が届ける海の味は、アルデンテが決め手。抒情的なワルツ風の伴奏に乗せて。
2.「インド風チキンカレー」あぶら(脂)が黄色い方が、鶏肉は鮮度が良いそうだ。さらに、できたカレーソースは一晩寝かせるのがコツ。淡々と進行するアラビア風の音階は、多様なスパイスが効いているよう。
3.「パエリア」乾いた太陽と青い空が、スペイン風の音階と壮快なリズムで表される。パエリアの醍醐味は、皆でワイワイ取り分けて食べること。高速のフィナーレは、食べるのを待ちきれないその喜びか。
4.「オムレツ」シンプルだが、母の味を思わせるような何ともあたたかいメロディラインの曲。そういえば、オムレツほどシンプルだけど難しい料理はないなぁ。
5.「大阪風お好み焼き」ロックンロールのリズムに乗って。大阪のお好み焼きは、庶民の味。気取らずに、ソースをたっぷり塗って、さあ召し上がれ!
どれもがユーモラスで聴きやすいこの組曲は、これまでも多くの合唱団が歌以外のパフォーマンスとともに演奏している。さあ、我々はどう料理しようか…と思案していたところ、今回はテアトル・エコーで活躍されている永井寛孝氏(演出/脚本家・俳優)の演出で、味付けしていただける機会に恵まれた!この5皿をどのようなかたちで皆さんにお届けできるのか、実は我々自身も今から楽しみである。