今回取り上げるオラ・イェイロは1978年生まれの38才!新進気鋭の現代の作曲家としてもっとも注目されている音楽家の一人だが、ピアニストとしても秀逸であることが、発売されている多くのCDからうかがえる。

ノルウェー出身。同国の国立音楽院で学んだ後、イギリスの王立音楽院、アメリカのジュリアード音楽院で学んだ。ピアノ曲のほか合唱曲、特に宗教的な題材をモチーフにした作品も多い。

 

今回演奏する、3つの曲もその宗教的なレパートリーのひとつ。

「Ubi Caritas」(慈しみと愛あるところ)は、グレゴリオ聖歌のテキストに由来する。このテキストは20世紀の作曲家M.デュリュフレの「グレゴリオ聖歌の主題による4つのモテット」でも使われているが、イェイロのそれは、同じテキストからくるグレゴリアンチャントの厳かなトーンは保ちつつも、緊張と調和が目まぐるしい、オリジナリティあふれるハーモニーが魅力となっている。

「Northern Lights」は、故郷ノルウェーでクリスマスに見たオーロラから影響を受けたと言われている。自然の恵みやその美しさには、感動を通り越して、時には畏れ敬う感情が湧き上がる。彼は、その想いを旧約聖書の一遍である雅歌から引用し、祈りのような、また一心に想い続けるさまを、透明感あるハーモニーで描き出している。

「Sanctus」は現在一般的に出版されているLondon版と呼ばれるもので、最初の作曲時からHosannaの部分に若干手が加えられている。

この曲は、ロンドン留学時代に、借りた安物のキーボードを使って作曲された。安物ゆえの拙い?楽器の音が幸いしたのか、良いインスピレーションを得た、というユーモラスなコメントが添えられている。が、実際にはやさしいものでなく、ハーモニーが次々と移り変わり、ぶつかりと解放が随所に繰り返される、とてもやりがいのある曲(難曲!)である。